TOP ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術 書籍で学ぶ人工知能と協業する技術

2020/03/12

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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術

第64回

書籍で学ぶ人工知能と協業する技術

  • キャリア
  • ビジネススキル
 

逆に言えば、考えるスキルがある人にとっては活躍の場が広がるのが今の時代です。別に人工知能の専門家でなくても構いません。大事なのは、人工知能を「使う」こと。つまり、新しい問題に直面したとき、ダンドリよく解決策を考えて、周りの人に分かりやすく伝え、人工知能を使って実行できる人材です。変化が激しく先の見通しができない時代、このような人の価値はますます上がっています。そのためにもプログラミングと協業するスキル……なのですが、これに関して日本人は海外に大きく後れを取っています。ここのことを改善したいという思いが「プログラミングとロジカルシンキングが一気に分かる本」を執筆した動機です。

 

◆順序よく学べるプログラミング思考

具体的には、筆者が「プログラミング思考」と名付けた、「今やっている仕事を自動化するとしたらどうなるか」を考えるのがスタートポイントです。プログラミングと協業といっても、いきなりプログラミング言語を書く必要はありません。まずは、目の前の仕事をコンピュータで自動化するとしたら、どんなダンドリになるだろうか? と考えるのです。そしてその際には、「自分独自のやり方」という属人化のわなを避けて、「誰がやっても同じような結果になる」ことを意識するのがポイントです。そうすると必然的に、仕事の全体像を押さえた上で、分かりやすいダンドリに落とし込むという発想になります。

 

ここまで来たら、ロジカルシンキングの出番です。プログラミング思考で考えたダンドリを、今度は個々の業務に分けて考えます。そのようにして小分けにした業務を実行することで、ぱっと見には「大変そう」と思える大きな問題でも解決することができるのです。そして、その際大事なのは業務をモレなくダブりなく細分化すること。そうでないと、いざ実行というときに大事な業務がモレていて、「あちゃー」となってしまいます。このために、ロジカルシンキングのMECE(ミーシー)、つまりモレなくダブりなくという考え方を使いながら細部を詰めていくことになります。

 

まとめると、まずはプログラミング思考で大きなダンドリを考える。次はロジカルシンキングでMECEに業務を切り分ける。このステップが、プログラミングと協業しながら問題を解決していくための基本であり王道なのです。

 

ただ、この手の話は、「分かったような、分からないような……」となりがちです。実際、これまでロジカルシンキングの本を読んでも、ピンとこなかったという人は多いのではないでしょうか。そこで本書では、Excelの例題を使いながら解説を進めています。ちょっと意外に思うかもしれませんが、プログラミング思考を学ぶのに最も適したツールはExcel。なぜならば、Excelの計算式は、プログラミングの基礎である論理構成をしっかりしないと思うように結果を得られないからです。

 

例えば、お客さまの一覧表をまとめたExcelファイルの中から、「従業員数300人以上の企業をピックアップする」という作業を考えてみましょう。まさかと思いますが、手作業でいちいちセルに色をつけるなんてことはないですよね?そんなことをやっていたら、手間はかかるし間違いはおこる、おまけに仕事が属人的になってしまって、筆者が懸念する「プログラミングと協業できない日本人」の典型です。

 

本書には、簡単な例から徐々に複雑になるようにExcelの使い方が解説されていますから、そこを読むだけでも、プログラミングと協業するという意味が分かります。さらに余裕がある人のために、実際のプログラミングの中身も後半で紹介しています。このように段階を踏んで、一見難しそうなプログラミングとロジカルシンキングが「使える」ようになる工夫が本書の特徴です。

 

冒頭に書いた通り、子どものプログラミング教育必修化は目の前です。そして、ビジネスでのAI活用はものすごい勢いで進行中です。そんな時代に対応して、プログラミングと協業するスキルで自身と子どものキャリア展望を開きたい場合は、ぜひ手に取ってみてください。

 

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■書籍情報

『プログラミングとロジカルシンキングが一気にわかる本』
著者: 木田 知廣
出版社:翔泳社
価格:1,650円(税込) 

この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
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プロフィール

  • 木田 知廣氏

    木田 知廣氏

    シンメトリー・ジャパン 代表

    大学卒業後、米国の名門コンピュータ会社DECで働き始めるも、IT業界の再編の波を受けて同社は消滅。退職を余儀なくされる。この経験をきっかけに、会社が倒産しないための「まっとうな経営」とは何かの模索を始め、その答が「人材マネジメント」であった。

    この分野で研さんを積むべく、人事コンサルティング会社ワトソンワイアットの門をたたき、厳しい選抜を経て採用される。ところが、実際に働き始めると、先輩コンサルタントとの能力差にがくぜんとし、大きな挫折を経験する。ここから、ロジカルシンキングのスキルアップを本格的に開始し、年間100冊以上の本を読破。ディベートなどの「対外試合」もしながら、体系的なロジカルシンキングを完成させる。

    この努力は、2002年にグロービスにてクリティカルシンキングの講師としてデビューすることに結実する。これまで自身が苦労して身につけた方法路を分かりやすく解説するその教え方には熱狂的なファンがつき、これまでに1万人を超えるビジネスパーソンに、その奥義を伝授してきた。2006年、シンメトリー・ジャパンを立ち上げて代表に就任し、誰でも参加できるオープンスクール形式の講座によりロジカルシンキングを普及することに力を入れている。ライフモットーは、“Stay Hungry, Stay Foolish”(同名のブログを執筆中)

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