TOP 社長を目指す方程式 大型商談も採用面接も面白いように上手くいく「4つの質問」

2021/07/20

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社長を目指す方程式

第70回

大型商談も採用面接も面白いように上手くいく「4つの質問」

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今回の社長を目指す法則・方程式:

ニール・ラッカム「SPIN(質問説得話法)」

 
新年度も最初の四半期が過ぎ、新体制でのチームコンディションや部下たちのアベレージの力量が見えてくる頃ですね。リモート商談で、ビフォーコロナ以上に提案シナリオ構築力、コンサルティング的なコミュニケーション力が営業の成否を決定づけるようになっています。上司としては、その点での部下育成も喫緊の課題で、コロナ下で自チームの成績を左右する要因でもあります。

 

コンサルティング営業や提案型営業を教えたいと思って、いざ伝授しようとしても、今ひとつうまく説明してあげられない。ううむ、口で言ってできるものでもないしなぁ。結局はセンスの問題だろうか…。

 

そう思ったあなた。コンサルティング営業、提案型営業には具体的な型があります。今回はその中でもわかりやすく実践的な方法をご紹介しましょう。

大型商談における最も効果的な営業術

セールストレーニングでフォーチュン500企業の多くを教え、成果を挙げ続けたことで著名なニール・ラッカムの提唱したセールスコミュニケーション法に、「SPIN(質問説得話法)」があります。これは、特にB2Bの大型商談において、売り込まない会話で絶大な効果をあげる手法です。

 

SPINはSituation Questions(状況質問)」「Problem Questions(問題質問)」「Implication Questions(示唆質問)」「Need-payoff Questions(解決質問)」の頭文字を取ったもの。この流れの通りに質問をしていくだけで、あら不思議。しっかりコンサルティングセールスが完成するのです。

 

優れているのは、SPINでセールスされた相手は、売り込まれたとも押し付けられたとも思わず、相談に乗ってもらった上で自らの意思で解決策となる商品やサービスの購買・導入を決定したと思ってくれることです。

 

そもそも営業にはB2Cの営業(個人の消費者相手)とB2Bの営業(法人相手)があります。そしてB2B営業には、小型商談(少額案件)と大型商談(高額案件)があります。ニール・ラッカムは、長年のセールスの研究(12年に渡り世界3万5000件の商談を調査研究したとか)から「小型商談で成功したスキルは、大型商談では致命症になる」と喝破したのです。両者の売り方は全く異なる。特に大型商談での失敗、売れない営業の共通項は、大型商談で小型商談の売り方をしていることにあるのです。

小型商談と大型商談の違い

◎小型商談:買い手は一人で意思決定する、できる。1回の商談で終わる。商品知識、スペックで勝負。多少の損は許容範囲。御用聞き型営業が通用する。押しの一手が結構通用する。

 

◎大型商談:複数の人間が関わり、商談が数週間、数カ月続く。顧客の課題解決となることが必須。高額であり失敗は許されない、購入担当者の責任問題になりかねない。押しの一手は通用しない、逆に出入り禁止となる可能性大。

 

小型商談ではうまくいった営業スタイルが、大型商談では通用しない。それどころか、そもそも関係を持つことすら相手に嫌われかねない(出入り禁止となる)わけです。あなたの部下に中途で採用した人がいた場合、前職と御社での適する商談スタイルの違いがないかなども、業績との相関関係をチェックする際に気に留めたい部分です。

 

これが4つの質問で大型商談を獲得する会話だ!

では実際のSPINによる商談会話の例を見てみましょう。

 

営業マン「御社ではコロナ禍の中で、フルリモートワークに切り替えていらっしゃるそうですね。社員の方々は問題なく業務を進めていらっしゃいますか?」(状況質問)

 

社長「工夫してやってくれているけれども、オフィスでのような臨機応変なコミュニケーションがリモートだとなかなかできなくて苦労しているようだね」

 

営業マン「なるほど、対面のようにはいかないですよね。特にどういった部分が、皆さんの業務の支障になっていらっしゃいそうですか?」(問題質問)

 

社長「電話だと、いま話しかけて良いのか分からないし、メールだと送ってからすぐにレスが返ってくるかが分からないのもストレスになっているね。オンラインミーティングも頻繁にやっているが、それ以外のときにちょっとしたことでチームのみんなで話ができないので、合意や確認を取るのが面倒だという声も多い」

 

営業マン「そうなのですね。では、いま同僚がリモートでもオンラインで業務中なのかどうかが分かって、会話したいメンバーたちとすぐにやり取りできたり、関係者全員でコミュニケーションできるようなシステムがあると、御社ではかなり役に立ちそうですね」(示唆質問)

 

社長「そんなのがあれば、リモートワークでのコミュニケーションや生産性がかなり上がるね」

 

営業マン「実は当社でこのたびリリースしたオンラインワーク支援システム『オンラインくん』は、従業員全員がいまオンラインワーク中かどうかが常にわかり、部署ごとやプロジェクトごと、また個別にやり取りしたい人といつでもすぐにやりとりできる、ウェブ上のコミュニケーションシステムなのですが、このようなシステムは御社の皆さんにはお役に立ちそうでしょうか?」(解決質問)

 

社長「それは良さそうだね。具体的に聞かせてよ」

 

いかがでしょうか。

 

よくある法人営業商談では、ひとしきりアイスブレークなどがあって、早速、「我が社のシステムは○○で、強みとメリットは△△」ときます。相手が元々御社の商品やサービスを使いたいと思っているならこれでもOKですが、概ねの大型商談では相手の困りごとは曖昧だったり、必ずしも御社が提供するものに合致した課題ではないことが多いでしょう。

 

法人営業で勝率を上げるには、

 

×商品・サービスの提案→YES/NO
○状況伺い→課題の抽出・確認→その課題に対する解決策のイメージ合わせ・合意→その解決策を当社の商品・サービスが実現できることの共有→YES

 

ということが言えます。

 

転職でも使える、SPIN面接対応術

SPINの法人営業・大型商談での効果性を感じていただけたのではないでしょうか。

 

SPINの効力はB2Bの大型商談に限りません。もしあなたが転職をお考えなら、まさにその面接でも絶大な効果を発揮します。

 

そもそも転職活動とは、自分という商品を望ましい企業に「購入(=雇用)」してもらう営業行為。SPINを使って面接で話す場合の一例を見てみましょう。

 

*あなたが人事責任者として転職活動に臨んでいるとします。

 

「御社の人事部門で責任者をお求めとのことですが、現在、人事部門はどのような体制になっていらっしゃいますか?」(状況質問)

 

「なるほど、どのようなことが課題となっていらっしゃるのでしょう?」(問題質問)

 

「そうなのですね、今後の事業拡大・組織体制に合わせた人事制度が必要とのことで、同じような局面を乗り越えた人事制度刷新の成功例などがあるとよさそうですね?」(示唆質問)

 

「私は現職で、御社と同様に数十名から数百名へと組織規模が急拡大する過程での人事制度改定や組織活性化策を導入・実施し、現在の当社の状況に達することに貢献してまいりました。このような経験やノウハウは、御社のお役に立ちそうでしょうか?」(解決質問)

 

どうでしょう。この転職応募者は、一連の発言の過程で一切の「売り込み」「営業トーク」をしていません。行なっているのは、会話の流れに沿った「質問」だけです。まさにこれが望ましい転職活動における応募者側の話し方、説得の方法なのです。

 

SPINは更に、逆の立場である採用する側でも使える手法です。望ましい候補者に、売り込まずに我が社に入社することが望ましいと理解させることができます。

 

さらに、上司が部下を説得する会話でも有効だということは、ここまでお読みくださった上司のあなたなら、もうお分かりでしょう。ぜひ、SPINを使った部下説得のシナリオをご自身で作ってみてください。

 

 

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説得力とは、「相手の中に潜在的にある課題を顕在化させること」と「相手が自分で決めたと思わせること」の2つから成り立ちます。SPINを縦横無尽に使いこなすことで、あなたも説得力あり好感度高いマネジャーとなれること、間違いなしです!

 

※参考『大型商談を成約に導く「SPIN」営業術』(ニール・ラッカム 著/海と月社刊)。ソリューション営業を極めたい方には座右の書としていただきたい名著です。ぜひご一読ください。  

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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