TOP ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術 マーケティングファネルの誤解、必要なのはチューニング力

2024/05/16

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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術

第190回

マーケティングファネルの誤解、必要なのはチューニング力

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多くのマーケターが業務で活用する伝統的な「マーケティングファネル」を用いて、優先的に取り組むべき「効く施策」と、優先順位の低い施策が商品カテゴリーによって異なることを説明する。

「バズったから売れた!」「プロモーションが失敗して売れなかった」など、売上の好調・不調の要因を言い当てる会話はそこらじゅうで繰り広げられている。しかし、売れた理由(または売れなかった理由)には、商品力、価格、配荷力、ブランド力、広告やプロモーション、PR、販売促進、バズ、クチコミ、インフルエンサー、競合の存在や景気などさまざまな要因が絡み合っているはずだ。

にもかかわらず、マーケティングの現場では「この商品が売れた(売れなかった)のは、この施策が良かった(悪かった)からだ!」と極めて単純かつ直線的に原因を特定しようとする荒っぽい解釈が横行している。

売上は、お金を入れてボタンを押せば目当ての商品が出てくる自動販売機のような単純なものではない。にもかかわらず、普遍かつ便利に見えるフレームワークは、「これさえ使えば一発で課題を解決できる!」という過剰な期待とともに、妄信的に現場導入されてしまう事例が後を絶たない。

 世にあふれる有益な考え方や便利なフレームワークは、導入をする際、必ず自社商材に照らし合わせ、チューニングをする必要があるのだ。ここがすっ飛ばされてしまうケースが後を絶たない。

 多くのマーケターが業務で活用する伝統的な「マーケティングファネル」を用いて、優先的に取り組むべき「効く施策」と、優先順位の低い施策が商品カテゴリーによって異なることを説明する。

 2000年くらいまで、マーケティングのゴールは多くの企業で売ること(買ってもらうこと)だった。そのため、マーケティングファネルの最後は「Action(行動)」や「Purchase(購入)」が設定されていた。認知→興味→理解→比較検討→購入、といった順である。しかし、市場が超高度に成熟し、先進国では人口が減少する局面に入ると、企業の売上の多くは新規顧客の初購入(トライアル売上)だけでなく、既存顧客が既存商品を買い続ける「リピート売上」の割合が上昇することになる。そうなると、マーケティングのゴールは買ってもらうだけでは不十分だ。

 こうしてマーケティングファネルは、トライアル売上を増やす「買ってもらうまでのマーケティング(プリマーケティング)」に、リピート売上を増やす「買ってもらってからのマーケティング(ポストマーケティング)」が追加されることになった。これが俗にいう「ダブルファネル」である。ダブルファネルに、該当するマーケティング施策をマッピングすると次のように整理できる。

マーケティング施策マッピング

 施策とは、当該課題を解決する“薬”である。この世にあらゆる病気を治す万能薬がないように、マーケティングでもあらゆる課題を解決できる万能施策は存在しない。認知獲得が得意な施策は、個別顧客との深い関係構築は苦手だし、短期的かつ効率的に顕在顧客を収穫することにたけた施策は、中長期的かつ効果的に潜在顧客を育成することは苦手だ。

 したがってそれぞれの施策は、ファネルのどこからどこまでに効くのか(効かないのか)を、正確に理解していることが重要となる。ここで提示した施策マップは筆者が作図したものだが、似たようなものは多くの書籍やネットの記事でも見たことがあるだろう。そして、その一覧性や利便性から、多くのマーケティング担当者は、自身が担当する商品の戦略をこのフレームにそのまま当てはめて考えようとしてしまう。そこが間違いの始まりなのである。

プロフィール

  • 池田 紀行氏

    池田 紀行氏

    株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長

    1973年横浜生まれ。マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。大手企業300社以上の広告宣伝・広報・販売促進を支援。宣伝会議マーケティング実践講座 池田紀行専門コース、JMA(日本マーケティング協会)マーケティングマスターコース講師。 年間講演回数は50回以上、延べ3万人以上のマーケター指導に関わる。近著『マーケティング「つながる」思考術』(翔泳社)、『売上の地図』(日経BP)、『自分を育てる「働き方」ノート』(WAVE出版)ほか著書・共著書多数。

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